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June 2021|
ファツィオリ日記トップ
|August 2021
(July 9, 2021 5:50 PM)
採用ピアノ ファツィオリ F212
住所 東京都九段南2-1-30
イタリア文化会館B2F
席数 372席
日本におけるイタリア文化の普及と日伊文化交流の振興を目的とするイタリア文化会館。長年にわたりイタリア文化・芸術の発信拠点となり、様々な文化・学術活動を通じてイタリアを多角的に紹介し、総合的な理解促進を図っている。2020年に同館アニェッリホールにファツィオリF212を導入。あまり知られていない現代のイタリアを紹介したい、という思いを持って多岐にわたるイベントを展開してきたカルヴェッティ氏にとって、ファツィオリは伝統的でありながら現代のイタリアを体現するものであった。数日後に4年の任期を終え、退任を迎えるカルヴェッティ氏に話を聞いた。
前イタリア文化会館館長 パオロ・カルヴェッティ氏
イタリア文化会館 イタリア文化会館は、イタリア外務・国際協力省に属する機関であり、日本におけるイタリア文化の普及と日伊文化交流の振興を目的とし、文化的および学術的な講演・催事を行っている。その他にも日本諸機関や企業の後援活動、語学・文化コースの提供を行うなど、まさにイタリア情報の発信拠点としての役割を担っている。大きなエキジビションホールと東京で唯一のイタリア専門図書室を有し、1万5千冊を超えるイタリア関連書籍とイタリア文学者故須賀敦子氏の原稿などのプライベートコレクションも所有する。
「イタリア文化会館は1941年に建設されましたが、東京大空襲で破壊され1960年に再建されました。その後、2005年に建て替えられたイタリア文化会館は、外観とマスタープランをイタリアの建築家ガエ・アウレンティが設計しました。とてもイタリアらしいデザインの建物です」とカルヴェッティ氏は驚くほど流暢な日本語で説明してくれた。赤い色彩とガラスの格子が遠目にもとても印象的な外観のイタリア文化会館は、館内もイタリアらしいデザインに溢れている。「アニェッリホールは、372席の中規模の多目的ホールです。音響に優れていてコンサートにいらしたお客様から大変好評です。ホールの設計と座席もアウレンティのデザインによるもので、イタリアで制作した革製の椅子なのですよ」
現代のイタリアを伝える
イタリアの情報発信の拠点と広く知られているイタリア文化会館だが、カルヴェッティ氏は「現代のイタリア」を紹介していくことを強く意識してきたという。音楽においては「イタリア音楽=オペラ」というステレオタイプが一般的に普及しているが、その良さを認めた上で次のように語った。「イタリア文化会館では、イタリアらしいと皆さんによく知られているオペラなどではなく、イタリアのジャズや現代音楽のアーティストを数多く招聘してきました。イタリアのジャズが世界的に有名なことはジャズ愛好家以外にはあまり知られていないと思います。イタリア人作曲家による能の「謡」の現代曲コンサートを開催したこともあります。当館は公的機関であるためコンサートも無料ですし、商業的な観点を気にせず、今のイタリアを知っていただくためのコンサートを意識して企画してきました」
イタリアの誇り- ファツィオリ 「現代のイタリア」を紹介するというカルヴェッティ氏の功績の一つが、アニェッリホールにファツィオリを導入したことであろう。「イタリア人にとってファツィオリのピアノは、本当に奇跡的な成果だったと思います。ファツィオリは、ピアノメーカーとしては比較的に新しい会社ではありますが、80年代に突然現れて瞬く間に他の世界的メーカーに並ぶレベルのピアノ作り上げることができたのは信じられない奇跡です。イタリア人にとっての誇りでもあります」
アニェッリホール所有のF212は、ファツィオリが特許を持つ特別仕様の三層響板を備えており、同ホールのために製造された特注品だ。カルヴェッティ氏は、購入までの経緯を振り返り「実は、ファツィオリの購入は内部の予算の問題や踏襲すべき複雑な手続きなどで簡単なことではありませんでした。でも、私は優れたピアノを購入することができてとても良かったと満足しています。F212は、以前ホールが所有していたピアノと同じサイズなのですが、音のパワーが全然違います。音色だけでなく音の力に圧倒されます」と力強く話してくれた。
ファツィオリはホールで演奏した音楽関係者からも大変好評を博しているとのこと。さらに、コロナ禍により来日が叶わなかったアーティストによる現地配信のオンラインコンサートでは、カルヴェッティ氏の希望でファツィオリを使用するようになったという。「ファツィオリによって、よりイタリアらしさが増します」
イタリアのベルカントを理想の音とし、高度な職人技術を大切にしながら技術革新を重ねるファツィオリは、イタリア文化会館にとって、伝統的なイタリアと現代のイタリアを併せ持つイタリア文化を象徴するアイコンの一つになっているようだ。これからもアニェッリホールの音楽イベントを通じて、イタリア音楽芸術の素晴らしさを聴衆に届けてくれることであろう。
在任期間を振り返り、「新型コロナ感染拡大により活動が制限されてしまった期間を除けば、就任当時に思い描いていたことを達成できた」と微笑むカルヴェッティ氏。同氏の4年にわたる日伊文化交流と文化発展への献身ならびに大きな功績に感謝の気持ちと拍手を送りたい。