ファツィオリ日記

F212スモークユーカリピアノ、優雅な美しさ

ファツィオリ工場で「スモーク(燻=いぶし)ユーカリ」という木目のことを初めて見た時に、その美しい木目に一目惚れ!その場で発注しました。私の知る限りでは、このユーカリ材のピアノは世界初です。

この木目は、「非常に美しい」だけではなく、場所を変えて異なる角度からみると「3D」のエフェクトが生じ、まるでパターンが動いているように感じます。ユーカリを燻すことにより木目が立体的に浮かび上がり、とても美しい仕上がりになっています。屋根を開くと見える銀色とクローム仕上げが、燻ユーカリの濃い木目の優雅な美しさをさらに引き立てています。

ユーカリは、火にも水にも強く、百年近くその機能を保つともいわれている非常に安定した素材ですので、このピアノの美しさは長期にわたり保たれるでしょう。ユーカリは、近年、世界最大デザインイベントのミラノサローネでも注目を集めており、インテリアの世界でもトレンドになっている木材です。
このピアノは、珍しい燻ユーカリの「木目」ピアノというだけではなく、ファツィオリ最新特許技術の「三層響板」を備えています。是非ご試弾にいらして、安定性に優れた伸びやかな音色を味わってみてください。

ご試弾のご希望の方はぜひご予約下さい。


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アンジェラ・ヒューイットの愛したFazioliピアノに哀悼の意を捧げます

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既に新聞記事などで報じられていますが、アンジェラが20年近く所有し、数々のコンサートでも演奏してきたファツィオリのコンサートグランドピアノF278 が運送事故に会い、その早すぎる一生を終えました。

事故から10日経った2月9日、アンジェラはファンに対しFacebookでこのニュースを発表し、多くの慰めの声が寄せられています。
アンジェラは、イタリアのウンブリアにも拠点を持ち、2020年に第16回目を迎えるトラジメノ音楽祭を毎夏開催しています。アンジェラのF278は、この音楽祭でも、連日色々な会場に運ばれて活躍しただけでなく、ヨーロッパの様々な都市のコンサートにも持ち込まれることも多かったようです。
さらに大きな打撃は、このピアノでCDを録音することはもうできないことです。アンジェラによると、2003年からのヨーロッパでの録音は全てこのピアノで行ってきたそうです。この事故は、1月にベルリンで行なわれたベートーヴェンのヴァリエーション録音直後のピアノの搬出時に起きました。落下によるピアノの損傷は、修復不可能なほどで、同じピアノを一から作り直すことも難しいそうです。録音が上出来で幸せな気持ちでいた時にもたらされたこのニュース、アンジェラの驚きと悲しみは計り知れません。

「本当にこのピアノが好きでした。私の一番の親友で、一番の同伴者でした。録音の最中のピアノの感覚がとても好きでした。私がやりたいことを全て可能にしてくれる、そのような感情をいつも持ちました・・・・・最近、ハンマー交換などリフォームをしたばかりで、最高の状態にありました。このベートーヴェンのCDを聴いて頂ければ、それが分かります。でも、もうそうではない。」と、アンジェラは悲しい心情を表しています。
アンジェラは、毎年二作ほどのペースでCDをリリースしていますが、結果的に、彼女の愛するF278で最後に録音されることになったこのCDは、今年11月に発売が予定されています。

実際に、このピアノで録音された数々のCDは多くの賞を受賞してきました。直近でリリースされたのは「バッハの6つのパルティータ」ですが、「Fazioli ピアノの音色と色彩のクォリティーの点からの一番お気に入りはドビュッシー」だそうです。
アンジェラは最後に「私のピアノがピアノの天国で幸せであることを祈っています」と、書いています。5月の「バッハ・オデッセイ最終章」のコンサートでは、この悲しい出来事を乗り越えて、また素晴らしい演奏を聴かせてくれることと確信していますが、今は、私どもも、アンジェラの悲しみに寄り添い、Facebookに掲載されたこの演奏の抜粋を聴きながら、彼女のピアノのご冥福を心よりお祈りしたいと思います。




以下はアンジェラのFacebookメッセージの全文です。

I feel ready now to share a very sad piece of news. It happened ten days ago, and has been such a shock to me that I didn't immediately want to share it with the world. For the moment I will just write this, and not comment further. At the end of my most recent CD recording sessions (Beethoven Variations in Berlin), when I was so happy with the results and feeling elated, the piano movers came into the control room (where I was finishing up with my producer) to say they had dropped my precious Fazioli concert grand piano. My very own that I have used for all of my CD recordings done in Europe since 2003 (and of course for many concerts). I couldn't believe it. Well yes, it happened, and unfortunately the piano, now that it has been inspected by Ing. Fazioli and his staff, is not salvageable. The iron frame is broken, as well as much else in the structure and action (not to mention the lid and other parts of the case). It makes no sense, financially or artistically, to rebuild this piano from scratch. It's kaputt. The movers of course were mortified. In 35 years of doing their job, this had never happened before. At least nobody was hurt.

I adored this piano. It was my best friend, best companion. I loved how it felt when I was recording--giving me the possibility to do anything I wanted. It was also the only F278 Fazioli in the world to have the 4-pedal mechanism (normally reserved for the F308 model). And It only recently had new hammers and strings put on it. You will hear on the Beethoven Variations CD (when it comes out in November, I hope) that it was in top form. Now it is no longer. For my festival this summer in Umbria, of course we will still have Faziolis--that goes without saying. And at least I have no recording scheduled in the next few months. But now there is all the insurance saga (hopefully this won't take long), and then I can choose a new one in Sacile when Mr. Fazioli has three of them ready for me. But what with his production schedule, and my touring around the world, this will take some months, I imagine. You can hear this piano on my most recent recording--the Six Partitas of Bach (BBC Music Magazine's Record of the Month, by the way), but also on so many others. One of my favourites for the sheer quality of sound and colour from my Fazioli is the Debussy CD, of which you can hear extracts here. I hope my piano will be happy in piano heaven.....

Beethoven32.com 生誕250年-- ボリス・ギルトベルグとの偶然の出会い

先日、イタリアのサチーレにあるファツィオリ本社に出張した際に「Beethoven32.com」というプロジェクトの録画のために来社中のボリス・ギルトベルグ(Boris Giltburg)にバッタリ出会いました!

2020年は、ベートーヴェン生誕250年の記念すべき年ですが、各地で記念コンサートなど様々な催しが計画されています。ボリスの「Beethoven32.com」は、その中でも非常にユニークな試みで、ベートーヴェンのピアノソナタ全32曲を2020年中1~2曲ずつ録画し、順次ウェブ上で公開するというもの。 「Beethoven32.com」の演奏は、すべてファツィオリホールで録画するそうです。

ボリスは、このプロジェクトのためにソナタを一曲ずつ勉強しなければなりません。実は、彼はこれまで32曲のうち9曲しか弾いたことがないそうですので、この一年、彼はベートヴェンのソナタに非常に集中して取り組まなければならないでしょう。

このアドベンチャーは、Apple MusicYouTubeでもご覧になれます。最初のビデオは1月17日にリリースされ、その後、1〜2週間おきに新しい曲が公開される予定です。

そして、ボリスは、日本のファツィオリファンのために特別に演奏してくれました。私が携帯で録画した演奏をぜひお聴きください。

2020年は、ボリスと一緒にベートーヴェンを勉強しましょう!


なお、本日(1月17日)ボリスが最初のビデオをリリースしましたので、専門家による録画も・・・ぜひご覧ください!

アンジェラ・ヒューイット、「バッハ・メダル」受賞、その他ニュース

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いつもアクティヴなアンジェラ・ヒューイット。彼女の周りでは常に何か新しいことが起きているようですが、最近のニュースをお知らせします。 

1)2020年5月25日(月)・27日(水)バッハオデッセイ11&12
4年間12回コンサートシリーズでのバッハ完奏の旅は、いよいよフィナーレへ!詳細はこちらをクリックして下さい。

2)新しい パルティータ全曲CDリリースファツィオリでの再録音
オデッセイシリーズの第3回目に紀尾井ホールで多くの聴衆を魅了した「6つのパルティータ」。ファツオリで再録音されたCDが日本でも今秋リリースされました。

3)ライプツィヒ市バッハ勲章を受賞
数多くの「女性として初」を成し遂げて来たアンジェラ。ライプツィヒのバッハメダルが初めて女性に授与されます。
世界をリードするピアニストの一人であるアンジェラ・ヒューイットのコンサートとバッハの音楽の録音は高く評価されており、現代の最も傑出したバッハ通訳者の一人とされています。
バッハ・アーカイブ総長トン・コープマン教授を含む審査委員会は、授勲の理由を次のように述べています。「...カナダのグレン・グールド以来、アンジェラ・ヒューイットほどに、コンサートピアノという現代の楽器を用いて、バッハの解釈を生涯の研究の中心に置いたアーティストは居ませんでした...」

2020年のバッハ勲章は、バッハ・フェスティヴァル期間中の6月20日にライプツィヒ市長ブルクハルト・ユングから授与されます。受賞コンサートとしてアンジェラは「ゴルトベルク変奏曲」を演奏します。(チケット情報は英語で)

アンジェラは受賞の喜びを以下のように述べています。

「ライプツィヒ市のバッハ勲章を授与されたことを非常に光栄に思います..........
ヨハン・セバスチャン・バッハと同義である都市からこのような賞を受賞し、過去の著名な受賞者のリストに加えられる日が来るとは、想像したこともありませんでした........私の生涯で、バッハほど多くの時間を一緒に過ごした人は他にいないと思います。彼と過ごした一分一分に意味ががありました!バッハを地球の隅々に連れて行き、彼の音楽で、様々なバックグラウンドの人々に慰めと喜びをもたらすことができたことをとても幸せに思います。
この賞をバッハとライプツィヒの両方を愛していた音楽家の両親、特に私の幼少時から「生きた」バッハに導いててくれたオルガン奏者の父に捧げたいと思います。」

このニュースの英文はこちらをご覧ください。

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